足寄で育む「未来をつくる人」~オンネトーから始まる物語~
遥かなるオホーツクの風が草原を揺らす。足寄町の中心を流れる忠別川のせせらぎが、高齢者の笑い声と子どもたちのはしゃぎ声を運んでくる──それこそが、この町が最も大切にしている『音』だ。
「足寄なんて田舎で...」と笑う町民の言葉の裏にある誇りを、あなたは感じ取れるだろうか?人口減少で2050年に3759人へ減少すると予測されるこの町で今、静かな革命が起きている。2022年に始動した「人づくりの町構想」が、行政の枠を超えて地域の細胞一つひとつに浸透し始めているのだ。
役場職員が劇作家に!?町づくりコミュニケーターの挑戦
「机の上で計画書を作る時代は終わりました」。そう語るのは町職員研修プログラム責任者の山田祐介氏。2023年導入した「町づくりコミュニケーター養成講座」では、職員が俳優ワークショップで表現力を磨き、劇作家の指導で地域の物語を紡ぐ技法を学ぶ。
驚くべきはその効果だ。参加した若手職員が考案した「大誉地地区の物語マップ」は、古老の記憶を絵巻物に仕立て、地元中学生と共同制作。移住者向けガイドブックとして活用されている。『行政と住民が共創する』という概念が、芸術的手法で具体化された稀有な例だ。
オンネトーを舞台にした青少年育成
「苔のじゅうたんが教えてくれたのは、失敗こそ最高の教材だってことです」。そう語るのは町立大誉地小学校6年生の佐藤陽(はる)くん。年6回開催される「オンネトー探検隊」では、専門家指導のもと小学生が森の生態調査を実施。昨年は絶滅危惧種のクマゲラを12年ぶりに確認し、環境省のデータベースを更新した。
NPO法人オンネトーの魅力創造委員会によると、このプロジェクト参加児童の78%が「将来町に残りたい」と回答。『地元の自然がキャリア教育の場に変わる』という逆転の発想が功を奏している。
シニア知恵袋プロジェクトが生んだ奇跡のコラボ
「毎月第三土曜日はおばちゃんの革命デーですよ」。70歳の菅野節子さんが笑いながら見せるスマホには、高齢者が考案した“雪かき不要屋根”の設計図が映っている。「おばちゃんの知恵袋」プロジェクトでは、地域の匠の技術をデジタルアーカイブ化。町のものづくり企業が製品化を進めている。
中でも注目は世代間交流ワークショップ「お茶の間テック」だ。
- 高齢者が生活の知恵を伝授
- 若者がデジタル技術で再構成
- 小学生が市場調査を実施 という3段階協働モデルが完成し、道の駅で販売される工芸品の30%がこのプロジェクトから生まれている。
データが証明する「人づくり」の効果
2024年実施のまちづくりアンケートでは驚くべき結果が。
- 地域活動への参加意欲:62%(前年比18pt増)
- 「町の教育環境に満足」:85%
- 移住希望者の問合せ:47件(2年前の3倍)
転職会議の社員口コミには「周囲と深く関われる仕事が多い」との声が多数。「人づくり」が経済効果をも生み始めた証左だろう。
あなたも参加できる「人づくりカレンダー」
・4月:オンネトー春の生態調査隊 ・8月:忠別川カヌー教室 ・11月:雪灯りアート制作
行政主導ではない、住民が自ら動き出す仕組み。それを可能にしたのは「町民全員が先生であり生徒である」という認識の転換だった。十勝の大地に根付いたこのモデルは、人口減少時代の処方箋となるだろう。
今週末、オンネトーの森では新年度の探検隊説明会が開かれる。緑深い尾根を渡る風を感じながら、あなたも『人を育てる森』の一員になってみないか?