上尾の冬を温めるグルメ縁日 〜第3回あげおまるっとグルメ潜入記〜
冬の冷たい空気が頬を刺す駅前広場に、早くも春の訪れを告げるような熱気が満ちている。JR上尾駅西口に立ち並ぶキッチンカーの列―ここは、市民待望の食の祭典『第3回あげおまるっとグルメ』の最前線だ。
「お待たせしました!熱々の串ぎょうざいかがですか?」
店主の声と共に炸裂するジュワッという油の音。
上尾発・革命的な食文化
「東京から30分でこんな美食があるなんて!」と感嘆の声をあげる20代女性グループ。彼女たちが手にしていたのは、上尾名物『串ぎょうざ』だった。野菜や肉をぎょうざの皮で巻いて串刺しにしたこの発想料理、実は市民の自由な発想から生まれたものだ。地元の老舗店主・山田隆夫さん(67)は語る。
「最初は『何かを何かで巻く』という遊び心で作ったら、これが意外に当たってね。いまや上尾の冬の風物詩になりました」
観光協会のデータによると、初年度4店舗だった出店数は第3回で16店舗に拡大。肉汁爆発の豚串包み、スイーツ感覚のいちごチョコ巻きなど、多様性が年々進化している。
パスポートが繋ぐ地域の輪
「このイベントの真骨頂は『参加型』であること」と語るのは実行委員長の若林麻美さん。100店舗が参加する中、1,500円のパスポート購入者だけが味わえる特典メニューが用意されている。
「パスポート持ちの市民同士が『どこがおすすめ?』と会話する光景が至るところで見られます。パン屋の奥さんが隣の蕎麦屋を絶賛する―そんな地域の温かさがここにはあるんです」
実際、イベント期間中の地域経済効果は前年比18%増の約2億円(主催者調べ)。コロナ禍で分断されていた地域コミュニティの再生にも一役買っているという。
市民の声が創る食の進化
駅前のたこ焼き屋台で家族連れと話すと、面白いエピソードが飛び出した。 「去年の投票で最下位だった店が、市民の意見を取り入れてリニューアルしたら今年は行列店に!」(40代主婦)
『キラリ☆あげおご当地グルメ祭り』と連動した投票システムが、店舗の切磋琢磨を促している。老舗旅館「清水屋」の女将はこっそり教えてくれた。 「裏メニューの『おくらと大葉の磯辺揚げ』が毎年リピーターを呼ぶんです。実はこの組み合わせ、常連客の奥様のアイデアなんですよ」
工業都市が育んだ食の土壌
歴史的に見ると、上尾の食文化の発展は偶然ではない。市の公式記録によると、明治期の製糸工場発祥以来、全国各地から働き手が集まった歴史を持つ。「関西風たこ焼き」と「東北の芋煮」が融合した『芋たこ焼き』のようなハイブリッド料理が生まれる土壌は、この多様性の中から育まれた。
新たな伝統の幕開け
今年度から『AGEバル』事業と統合された当イベント。秋のバルイベントと連動して「食のまち上尾」ブランドが確立されつつある。駅前の開催スペースでは既に、参加店舗が腕を競う『第4回』に向けた準備が進められている。
最後に、パスポート片手に5店舗を制覇した老夫婦の言葉が胸に響く。 「グルメじゃなくてもね、町の笑顔が見たくて来るんですよ」
風がまだ冷たい2月下旬。でも駅前には確かに、人と人をつなぐ温かな熱源が息づいている。この週末、あなたもパスポートを握りしめて、上尾の新たな表情を探しにきてはいかがだろう。市役所前観光センターで、まだ予約可能なパスポートが待っている。