利尻ウニ偽装事件の裏側 ― ふるさと納税が揺らぐ島の誇り
利尻島の春、海風が運ぶ塩気とともに、島の人々は黒光りするエゾバフンウニを待ちわびる。 だが2022年末、ふるさと納税の返礼品として届いた冷凍ウニのパックを開けた寄付者から、「苦い」「色が汚い」といった苦情が相次いだ。 これは単なる品質のばらつきではなく、産地偽装という裏工作だった。
偽装の発覚と町の対応
利尻町は当初、品質管理の不備だと考え、製造元であるカネマス上田商店に改善を求めた。しかし、苦情の声は収まらず、町職員がサンプルを採取して検査を依頼したところ、ロシア産ウニが混ざっていることが判明した。 町長は記者会見で「利尻の名前を騙す行為は許さない」と強調し、5800万円の損害賠償を業者に請求した。
元社長の告白
逮捕された上田敏樹元社長(62)は、取り調べの中で「利尻ブランドの知名度にあやかり、売上を伸ばしたかった」と語っている。 彼によると、2020年から2021年にかけて、ふるさと納税の寄付額が急増し、利尻産ウニの供給が追いつかなくなった。 そこで、厚岸町の自社工場でロシア産ウニを混ぜ、あたかも利尻産だと偽ったという。
地元漁師の嘆き
利尻港でウニ漁を営む佐藤さん(58)は、「自分の手で採ったウニが、町の誇りとして売られるはずだった。偽装が発覚したら、漁師全体の信用が失われる」と声を震わせた。 彼はまた、偽装事件が明らかになった後、町が行った「利尻ウニフェア」での試食会に参加し、本物のウニの甘みと香りを再確認したと語る。
データで見る影響
- 2019年度のふるさと納税額:約1億3000万円
- 2020年度:約2億4000万円(+85%)
- 2021年度:約5億6500万円(+135%) この伸びの裏側で、利尻産ウニの年間漁獲量は約150トンにとどまり、需要に対する供給 Gap が広がっていた。
画像で見る現場
町の新たな取り組み
事件を契機に、利尻町は返礼品業者の募集要領を改定し、産地証明の書類提出を必須とした。また、第三者機関によるランダム検査を年二回実施する体制を整えた。 これにより、再び偽装が起きにくい仕組みを作り上げようとしている。
結び ― 訪れるべき島の味
今夏、利尻島へ足を運ぶなら、港の直売所で recién caught(水揚げ直後の)ウニを味わってほしい。 海の香りが口の中に広がるその瞬間こそ、偽装とは無縁の本当の利尻の恵みだ。 ぜひ、島の風を感じながら、本物のウニに出会ってみては。