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幻の果実サルナシが紡ぐ玉川村の秋物語

幻の果実サルナシが紡ぐ玉川村の秋物語

秋の訪れとともに、玉川村の丘陵地帯に広がる畑で、小さな緑紫色の実がひときわ目を引く。 それは「サルナシ(猿梨/さるなし)」――一見するとキウイフルーツを小さくしたような形だが、市場に出回る期間はごくわずかで、摘み取り体験ができるのは9月下旬から10月上旬だけ。 幻の果実と呼ばれる理由はそこにある。

サルナシの実

まずは、福島民報のこども記者たちが訪れたサルナシ農家の様子から。 小学生たちは農家の田中さんに「なぜサルナシはこんなに珍しいのですか?」と質問した。 田中さんは「山野に自生していた野生ブドウ系の果実を、昔から山で摘んで食べていた。名前の由来は、猿が好んで食べてしまうほど甘いからとも言われているんだ」と語り、実を一粒手に取って見せた。 子どもたちはその甘酸っぱい味に驚き、「もっと食べたい!」と声をそろえた。 この体験学習は、単なる果物の味わいだけでなく、地域の自然と歴史に触れる貴重な機会となっている。

次に、NHK仙台放送局のあさイチ中継で取り上げられたシーン。 アナウンサーの岩﨑果歩さんは、玉川村の加工施設を訪れ、サルナシから作られるジャムとワインを紹介した。 「生食だと日持ちがしないけれど、加工すれば一年中その風味を楽しめる」と岩﨑さんは説明し、ジャムの瓶を手に取ると、濃い紫色が光を受けて宝石のように輝いた。 ワインは軽やかな酸味とフルーティーな香りが特徴で、地元のレストランでもペアリングメニューとして提供されている。 この中継を通じて、サルナシの魅力は全国の視聴者に届き、オンラインでの問い合わせが急増したとのことだ。

あさイチ中継の様子

では、なぜ玉川村がサルナシの一大産地になれたのか。 データによると、村内のサルナシ生産量は全国シェアの約40%を占め、生産量日本一を誇る(※農林水産省 平成30年統計)。 一粒あたりのビタミンC含有量はキウイフルーツの約1.5倍、ポリフェノールも豊富で、抗酸化作用が期待できるスーパーフルーツとして注目されている。 さらに、低カロリーかつ食物繊維が多いため、健康志向の消費者からも支持されている。

生産量日本一の証

歴史をさかのぼると、サルナシは江戸時代の文献にも登場し、当時は「山ぶどうの実」として山仕事の合間に摘まれていた。 明治以降、果樹栽培が盛んになると、サルナシはその希少性から栽培が難しく、ほとんど野生のまま残された。 しかし、平成に入ってから若手農家たちが「幻の果実を守りたい」と試験栽培を開始し、品種改良と栽培技術の確立に成功。 その結果、今では安定した出荷が可能となり、観光資源としても位置付けられた。

地域振興の側面でも、サルナシは重要な役割を果たしている。 地域おこし協力隊 출신の黒木さんは、村内のサルナシ加工施設を基盤に会社を設立し、ジャム・ワインだけでなく、サルナシを使ったスイーツやドレッシングなど多岐にわたる商品ラインナップを展開。 黒木さんは「サルナシは村の宝。それを次世代に伝えるため、子どもたちに摘み取り体験を提供し、同時に地元経済を活性化させたい」と語る。 その取り組みは玉川村観光物産協会でも支援され、ウェブサイトでは摘み取りカレンダーや加工品の通販ページが設けられている。

今年の秋も、玉川村の畑ではサルナシが実を結び、訪れる人々を待っている。 9月下旬から10月上旬にかけて、摘み取り体験ツアーが開催され、事前予約制だが、まだ空きがある日もある。 体験後は、すぐ近くの直売所で出来立てのジャムを味わい、村のカフェでサルナシワインを片手にほっと一息。 幻の果実に出会うこの機会を、ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。

今週末は、玉川村へ足を伸ばして、サルナシの甘酸っぱい秋を体感してみてください。

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