赤いトロッコと新緑の物語
春の訪れとともに、山々の新緑が目を覚ます頃、あなたはどんな風景を思い浮かべますか? 真っ赤なトロッコが静かにレールを進む姿――それは、まるで絵本の中から飛び出したような光景です。
赤村トロッコ油須原線は、かつて筑豊炭田の lifeline として計画された国鉄油須原線の未成線を引き継ぎ、平成筑豊鉄道の赤駅前から野原越トンネルまでの往復約3.6キロを走ります。
戦後の復興期、石炭需要が高まった頃、この路線は炭鉱から苅田港への輸送ルートとして1957年に着工されました。 しかし、エネルギー構造の変化と炭鉱の閉山により、線路は途中までしか完成せず、開業されることなく「幻の未成線」として土に埋もれていました。 当時の工事関係者の証言によると、トンネル掘削は手掘りと dynamite を併用し、過酷な作業環境の中で多くの労働者が汗を流したそうです。
地域の有志が「せっかくの線路を活用しないともったいない!」と声を上げ、2004年に観光トロッコ列車として運行が始まりました。 現在はボランティアの若者が沿線案内を行い、乗客に炭坑時代の面影や周囲の豊かな自然を語りかけてくれます。 彼らの中には、祖父母が炭坑で働いていたという者もおり、個人の歴史と地域の記憶が重なります。
実際に乗車してみると、まず目を引くのは車体の鮮やかな赤色。
トンネルに入ると、車窓からは薄暗い石壁が迫り、頭上ではコウモリの姿が時々見えます。
赤村周辺には、ミニオオコウモリやアブラコウモリなどが生息しており、トンネル内は貴重な冬眠場所となっています。
"狭軌610ミリという驚くほど細いレール幅が、足元を伝ってくる振動をそのまま感じさせる"――蒸気宇宙船航宙日誌の作者はそう書き、さらに "約30分の乗車で、まるでタイムスリップしたかのような静けさに包まれた"と語っています。 また、【九州遠征レポート編⑨】よーのすけさんは "片道1.7キロの線路は2本のトンネルをくぐり、赤村と隣の大任町の境界(トンネル内)まで行って引き返してくる。ボランティアの若者が沿線の観光案内をしてくれたりして何ともいい風情がある" と紹介しています。 さらに、KBCの記事では "レトロでかわいい真っ赤なトロッコ♪10月には20周年のお祭りも" と記され、地元の有機いちごを使ったスイーツ販売や、炭坑時代の写真展、昔の作業服を着たスタッフによるガイドが予定されていると伝えています。
乗車中は屋根こそあるものの、前後および横方向はオープンのため、新緑の香りや風を直接感じられます。
ただし雨天時は確実に濡れるため、雨合羽の持参が推奨されています。
これまでの歩みも見逃せません。 赤村トロッコ油須原線は、未成線を引き継ぎ15周年を迎え、乗車者数はついに4万人を達成しました(マイナビニュース)。 さらに、今年で運行開始から20年という節目を迎え、10月には記念イベントが計画されています。 地元の有機いちごを使ったスイーツ販売や、炭坑時代の写真展など、地域全体が盛り上がる様子が伝わってきます。
最後に、私が実際に体験した瞬間を共有します。 列車がゆっくりと発車すると、車窓に広がる新緑の山並みが目を奪い、赤い車体がその緑の中に溶け込むように見えます。 トンネルを抜けると、開けた野原が現れ、遠くに筑豊の山々が連なる姿が見えてきました。 "これは、ただの観光列車じゃない。地域の記憶と未来をつなぐ架け橋だ"――そんな思いが胸を熱くさせました。 春の訪れを告げるこの赤いトロッコに、ぜひ一度乗ってみてください。 今週末は赤村へ足を伸ばし、新緑と真っ赤なトロッコのコントラストを体感してみてはいかがでしょうか。