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中区に爆誕!「ぶち安い」食のテーマパーク

中区に爆誕!「ぶち安い」食のテーマパーク

午前九時半。まだ朝の冷気が街角に残る広島市中区・基町の商業施設前に、異様なほどの熱気が漂っていた。開店を待つ長い行列。その先にあるのは、ただの日用品を扱うスーパーマーケットではない。中四国地方に初めてその扉を開けた「食のテーマパーク」だ。私たちはなぜ、こんなにもスーパーに行列するのか。ネットショッピングが当たり前の現代において、人々が求めるのは単なる「効率」と「安さ」だけではない。便利さや価格だけで説明がつかない、ある種の「祝祭感」や「体験」が、そこに確かに息づいている。

2026年4月3日、金曜日。首都圏を中心に約150店舗を展開する「食生活♡♡ロピア」の広島パセーラ店が、予定を15分前倒して幕を開けた。「広島1号店、開店します」という力強い掛け声と共に上がったシャッター。その瞬間、空気が動いた。店舗の根底に流れるコンセプトは明快だった。「ロピアは買い物にくるところではありません。楽しみにくるところです」。1971年に神奈川県で精肉専門店として産声を上げた企業が、半世紀以上の時を経て描く新しい食の風景。それは、単なる物品販売の場を遥かに超越し、訪れる者の五感を刺激する空間へと進化を遂げていた。

パセーラ地下に誕生した食のテーマパークの風景

店内に足を踏み入れれば、その言葉の重みが嫌というほど分かる。天井にはレトロで愛嬌ある鉄道模型が軽やかに走り抜け、視覚と聴覚を同時に満たす。店舗ごとにチーフが趣向を凝らした生鮮品や総菜が所狭しと並び、まるでアトラクション巡りをするかのように通路が進む。中でも圧巻なのは野菜売り場だ。ブロッコリーが1つ100円という破格の値段に並ぶのは、太字で書かれた手書きのPOP。「ぶち安い」。あえて標準語ではなく、広島の土地に深く根付いた方言を公式に掲げたこの一言が、訪れる者の心をぐっと鷲掴みにする。

店舗ごとにチーフが手掛ける愛嬌あるPOPと野菜売り場

これは決して単なるマーケティングの計算ではない。追加取材で明らかになったのは、これらのPOPは現場の店舗チーフたちが「自分たちの言葉で、地元の人に一番響く形で伝えたい」との想いから、自らの手で書き上げているという事実だった。中央集権的なマニュアルに縛られず、現場の裁量で土地の空気を吸い上げたホスピタリティ。そこには、等身大の人間臭さと、圧倒的なコストパフォーマンスの相乗効果が滲んでいる。「ぶち」という広島弁が持つ無邪気な親しみと、実物の安さ。SNSで瞬時に拡散されたこのPOPは、数字や効率を超えた「共感」が作り出す、現代の小売りが辿り着いた新しい形を教えてくれる。

中区という立地の妙も見逃せない。平和記念資料館では昨年度、入館者数が258万人を突破し最多を記録。背景には増加の一途を辿る外国人観光客の存在がある。ロピアのオープンは、そんな世界的な観光動線と、地元住民の日常回遊を巧みに交差させる起爆剤となった。海外からの訪問者がカメラを構え、地元住民が買い物かごいっぱいに旬の食材を詰める。異文化交流の最前線でありながら、夕飯の支度という最も身近な営みが奇妙に、そして美しく共存する。食という普遍的なテーマが、国境や世代の境界を自然に溶かしていく瞬間だ。

天井を走る鉄道模型と「食のテーマパーク」の演出

広島県内では今後、この成功を追い風に店舗数を4店舗まで拡大する方針が示されている。しかし、この1号店が持つ熱量と実験性は、決して代替が利かない。「食のテーマパーク」とは、アトラクションに乗ることを楽しむのではなく、季節の移り変わりや土地の言葉、人と人の繋がりそのものを「楽しむ」装置なのだと確信する。それは、消費社会の片隅で、私たちがかつて忘れていた「買う喜び」を呼び覚ます。

今週末は、ぜひパセーラの地下へ足を運んでみてほしい。列車の模型の汽笛に導かれ、「ぶち安い」の文字の下で広島の土の息吹を感じ取る。買い物リストを片手の事務的な作業ではなく、五感を研ぎ澄ませて散策するのだ。そこには、広島の食の未来と、変わらない日々の豊かさが、確かに息づいているから。

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