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はにわが語る旅:市原歴史博物馆の特別展

はにわが語る旅:市原歴史博物馆の特別展

『はにわが旅をする』——この言葉を聞いて、あなたは何を想像するだろうか? 土くれの置物が、どうやって旅をするというのか。市原歴史博物館で開催中の特別展は、そんな素朴な疑問から、千年以上前の驚くべき“地域間交流”の物語を紐解いてくれる。

編集長が選んだこのトピックの核心は、単なる展示紹介ではない。市原市の山倉1号墳から出土した埴輪が、遠く埼玉県鴻巣市の生出塚埴輪窯で焼かれ、房総の地へ運ばれてきた——その“旅路”を科学的に証明した調査成果を祝う、記念碑的な展覧会なのだ。今年は、山倉1号墳の発掘調査報告書刊行から exactly 20年。節目にふさわしく、県指定文化財の「山倉1号墳出土埴輪」をはじめ、今年8月に国の重要文化財に新指定された“はにわ”など、稀有なコレクションが一堂に会している。

追加取材で見えた最大の驚きは、埴輪が「職人の手仕事」で語られる点だ。生出塚窯跡の調査から、少なくとも13人の職人が関わり、その中でも「F」と仮称されるエース工人が全体の4分の1を手掛けた可能性が高いという。刷毛目の痕跡から現代の職人分析のように「誰が作ったか」を推定する手法は、まさに考古学と職人芸の融合。山倉1号墳の埴輪一つひとつに、窯から運ばれるまでの軌跡と、人間の体温が宿っているのだ。

山倉1号墳出土埴輪

展示は、房総半島における埴輪文化の広がりを「地域間交流」の視点で読み解く。近畿地方に比べて流行がやや遅れたとされる房総の埴輪だが、山倉1号墳の品々は、東日本最大級の工房から届いた“最先端”の様式。人物や馬、犬形のはにわは、当時の墓飾りとしてだけでなく、他地域との文化的つながりを象徴する「旅人」でもあった。

展示図録には「渡来人の衣服を思わせる長袖の着装」や「生前の儀式を表現した配置」など、細やかな描写が紹介される。はにわの中空構造や腕の接合方法——これらの技術的謎も、職人の創意工夫が生んだ旅の証しだ。

房総の埴輪

県内外から借用された重要文化財も圧巻だ。鴻巣市の生出塚窯跡出土人物埴輪、姫塚古墳の人物埴輪、殿塚古墳の犬形埴輪など、総勢4点の“大御所”が市原の地に集結。特に、文字が刻まれた埴輪は、当時の記録としても貴重で、調査報告書が教えてくれた「旅の軌跡」を視覚的に体感できる。

特別展ポスター

展覧会は単なる鑑賞ではなく、体験型プログラムも充実する。11月3日には「ミニ人物はにわづくり」、11月9日は「埴輪の来たみち」と題した郷土学習講座を開催。はにわの故郷・さきたまを訪れるバスツアーも企画され、地域の歴史を“体感”する機会を提供している。

取材を重ねるほど、はにわが“動く存在”として読めてくる。窯で焼かれ、車輪付きの夯(つち)で運ばれ、古墳に並べられる——現代の物流とは違う、人の手と意図に満ちた旅。これは、6世紀後半の房総が、近畿や関東圏とどうつながっていたかを示す、生きた証拠だ。

筆者自身、展示図録を捲りながら、はにわの袖の造形や刷毛目の細工に、職人の“遊び心”すら感じ取った。空洞の袖をどう作るか、腕をどう取り付けるか——技術書にはない、人間臭い創意が、千年を経て私たちに語りかけてくる。

会期は12月15日まで。この秋、市原の丘で Completed した“はにわの旅”を、自分の目で確かめにいってはどうか。博物館を出るとき、あなたもきっと、土くれの中に生きる人々の息吹を感じるだろう。

参考:市原歴史博物館 特別展「旅するはにわ-房総の埴輪にみる地域間交流-」公式ページ

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