無投票で選ばれた町長が語る、竹富町の『顔の見える政治』
あの青い海に白い珊瑚の家並みが広がる竹富町で、町長選が無投票で決まった——。人口約4,000人、16の島々からなるこの小さな町しょで、現職の前泊正人氏(48)が6年ぶり4回目となる無投票再選を果たした。『町良くしたいという町民の思いと自分の志が一致した結果』——。当選後の支援者への言葉に、地域政治の核心が潜んでいる。
告示日、石垣市の後援会事務所で行われた出陣式には、町議11人中9人が駆けつけた。前泊陣営は『5本の柱と50項目の政策』を掲げ、『スピード感を持って課題解決に取り組む』と宣言。InstagramやFacebookでの活動紹介も欠かさない、現代的な地方リーダーだ。
無投票選挙は、決して“民主主義の欠如”ではない。竹富町の歴史を紐解くと、1956年、1992年、2020年にも無投票が記録され、告示直前にライバルが身を引いたり、政党が候補擁立を断念した背景がある。人口減少と高齢化が進む過疎地では、限られた人材と予算の中で『誰がやっても同じ』という共通認識が生まれやすい。町議の圧倒的upport(9/11)は、その証左だ。
では、なぜ前泊氏にそこまで信頼が集まるのか。鍵は『顔の見える政治』にある。竹富町では、町長が島々を回り、漁業や観光、教育の現場で住民と日常的に対話する。地域おこし協力隊の瀧田楓さん(大阪出身)が空き家対策に奔走るように、外部人材も受け入れつつ、地元ネットワークを活かした政策実行が評価されている。
しかし、無投票が常態化すれば、多様な意見が政治に反映されにくくなる懸念も拭えない。実際、町役場の場所を石垣島とするか西表島とするか、過去に住民投票が行われるなど、論点は少なくない。それでも、『結束』を重んじるこの島の風土は、災害(地震や洪水警報が頻発)といった危機にも迅速に対応できる強みでもある。前泊氏は「明るい未来を築く」と強調。世界自然遺産登録を目指す西表島の観光振興や、高地でのスマート農業など、具体的な『50項目』の実現に向け、新たな仕組みづくりを進めるという。
小さな町だからこそ、政治は個人の信頼と日常の積み重ねで成り立つ。竹富町の無投票再選は、一見独特だが、コミュニティが一体となって課題に立ち向かうモデルケースかもしれない。ぜひ今週末、この島を訪れてみてほしい。港で漁師が笑い、役場で協力隊が島の未来を語る——。そこには、選挙の行方以上に、地域の“生き生きとした体温”がある。