column

金山町の暗がりに光る 日本酒と生チョコが結ぶ異色コラボ

金山町の暗がりに光る 日本酒と生チョコが結ぶ異色コラボ

ホラーゲームの舞台となった路地裏で、なぜか香り立つ酒粕の甘み──。岐阜県下呂市金山町を歩けば、足元にひそむ『サイレントヒルf』の不気味な世界観と、奥飛騨酒造の醸す芳醇な酒香が奇妙に交錯する。

筋骨路地の風景

『あのゲーム画面、祖母の家の裏道そっくりで震えた』。地元住民のSNS告白が物語るように、この町の「筋骨」と呼ばれる路地群は、迷路のような構造と薄暗い石畳が恐怖体験の舞台に転化された。しかし開発陣が本物の町並みを再現した真意は、単なるホラー作品の設定を超える。地元の魅力発掘プロジェクトの一環として、コナミが町おこし団体「あさひ会計」と組んだ市民参加型調査がすべての始まりだった。

■ 酒蔵とゲームの奇跡の出会い ステンレスタンクが並ぶ奥飛騨酒造の醸造場で、杜氏の山田和義さん(58)は静かな興奮を隠さない。「ゲームに登場する赤い花が、うちの酵母と色が似ていると開発者さんが気づいてくれたんです」。2年前の視察訪問で、ゲームディレクターが酒蔵の扉を叩いた瞬間から始まった化学反応。試作品の生チョコレートに大吟醸を練り込む開発過程では、社員全員がプレイテストに参加し「退廃的な美しさを味覚で表現する」というテーマに挑んだ。

コラボ商品の画像

完成した限定商品には、ゲームファンも唸る細かな仕掛けが施されている。辛口日本酒『白真弓』のラベルに重なるかすかな血痕模様、生チョコを彩るいちごフレークは作中に散る紅花を表現。VTuberが実食動画で絶叫した「チョコの濃厚さがゾッとするぐらい美味い」との評判通り、アルコール度数を抑えた大吟醸の風味が甘みを引き締める。

■ 観光客が3倍に急増した真冬の町 栗蒸し羊羹やお守り型キーホルダーなど新グッズ発売後、町商工会の調べでは観光客数が前年比320%に急増。20代女性のグループがSNS用に路地撮影ツアーを楽しむ一方、地元高齢者が「怖いものみたさで初めてゲームセンターに入った」という微笑ましい交流も生まれている。町立資料館の学芸員・小林麻美さんは「戦後に廃れた鉱山町の暗い歴史が、逆に現代の若者文化と共鳴した」と分析する。

初売り当日、酒造店頭に朝6時から並んだ大学生・浅野颯太さん(21)の言葉が印象的だった。「ホラーが苦手でも、ゲームの世界を舌で味わえる。これなら怖がりの彼女と共有できます」。地元特産が異世界へのパスポートになる稀有な体験──路地裏を照らす赤提灯の下で、今夜も冷えた日本酒とチョコレートが、現実と幻想の境界を溶かし続けている。

暗がりを恐れず歩みを進めれば、路地の突き当りに酒蔵の看板が見えてくるはずだ。この週末は、金山駅から続く石畳を辿りながら、リアルとゲームの交差点で生まれた奇跡の味を探しに出かけよう。

この地域のビジネスデータを見る

📍 金山町の開業ガイドへ