島で星を数えた日 かもめ島小学生キャンプの diaries
君は、島で朝日を迎えたことがあるか。
それは、突然決まった。江差町内の小学校12名が参加した「かもめ島キャンプ」の日だ。夏の終わりのこと。子供たちは背負ったリュックの重さに顔をしかめながらも、約170段の階段を一歩ずつ上がっていった。重さは、荷物の重さだけではなかった。初めての島泊まりへの期待と、ほんの少しの不安が混ざった、その重さだ。
かもめ島。その名の通り、羽を広げたカモメのような形をした、周囲2.6kmほどの小さな島だ。ここはかつて「弁天島」と呼ばれ、ニシン渔业と北前船交易で賑わった江差の歴史そのものの舞台だった。海抜30mの島へと続く長い階段は、かつての人々が行き交った「記憶の道」でもある。子供たちが息を切らしながら登るその姿は、150年以上前、この島に降り立った商人や漁師の姿と重なる。
「荷物、重かったけど…上がりきった時の景色は、全部帳消しになった!」
参加者の一人が、顔をほころばせて話してくれた。彼らの目に飛び込んだのは、払暁の海に浮かぶ奥尻島、渡島大島のシルエットと、その間を縫うように朝日が昇る絶景だった。この島のキャンプ場は無料だが、その「条件」がこの絶景をより特別なものにしている。重い荷物を自ら運ぶという「儀式」を経て、ようやく得られる reward なのだ。
昼間は島内を散策し、断崖と灯台、波が削った「千畳敷」を歩いた。厳島神社の鳥居をくぐり、江差追分の普及に尽くした浜田喜一氏らの記念碑に手を合わせる。子供たちはガイドから、この島が単なる観光地ではなく、人々の祈りと営みが積み重なった「生きている歴史のページ」であることを聞く。1615年に建立された神社は、出海する人々の安全を願って建てられた。今もその佇まいは変わらない。
夜は、待ちに待った星空観測。海に囲まれた島は光害が少なく、天の川がくっきりと見える。小学生たちは、最初は星座の名前も知らなかったかもしれない。星空の下で語り合ううちに、自然のスケールに口を閉ざす者もいた。この非日常が、彼らの心に「美しさへの感度」を刻み込む。
この体験の教育的意義は、単に「自然と触れ合う」ことには収まらない。自分で荷物を運び、テントを張り、食事の準備をする。すべてが自主性を迫る。島の歴史や伝説に触れることで、自分たちが住む江差という土地の「物語」に自覚的になる。地域資源であるこの島を、観光として「消費」するのではなく、自分たちの「里山的 пространство」(居場所)として捉え始める瞬間が、キャンプの真の価値かもしれない。
朝、眠たい目をこすりながら起きると、窓の外にはもう海の青があった。波の音が、昨夜の星空の余韻のように聞こえる。子供たちは、荷物を整理し、階段を下りる。来た時より、リュックは軽くなっているような気がした。いや、物理的な重さではなく、心に残った何かが増えたからかもしれない。
江差町が、この小学生キャンプをかもめ島で行う理由。それは、島が持つ「季節感」「意外性」「地域性」のすべてを、一度に children に与えるからだ。夏の海風、日常を離れた非日常、そして江差という土地そのものが育んだ文化と自然が融合した場所。それが「かもめ島」なのだ。
この島は、子供たちに「大きくなる」とはどういうことかを、そっと教えてくれる。
今週末、あなたも江差町を訪れ、かもめ島への階段を上がってみてはどうか。その頂上で待つ絶景と星空は、あなたの中の何かを、確かに変えるだろう。