赤い絨毯の秋:八幡高原「赤そばの里」が紡ぐ地域の物語
9月の八幡高原を車で走っていると、突然、視界が真紅に染まる。そこは北広島町八幡地区の休耕田が広がる場所。普通のそばなら白い花をつけるはずが、ここには赤や濃いピンクの花が一面に広がっている。初めて見る者は、思わず車を止めて、その不思議な光景に見入ってしまう。これが「赤そばの里」だ。
赤そばとは、ヒマラヤ原産の野生種を基に、信州大学と種苗会社が共同開発した品種「高嶺ルビー2011」のこと。一般的なそばの花が白色なのに比べ、赤やピンクの花を咲かせる珍しい品種で、特に標高の高い場所での栽培に適している。北広島町の八幡高原は、その条件にぴったりだった。
このプロジェクトが始まったのは2014年。八幡地区に住む髙木茂さんを中心とした有志による共同出資で、休耕田約4ヘクタールを活用して栽培がスタートした。もともと「高嶺ルビー2011」は長野県で品種改良されたそば。長野県以外でここまで大規模に赤そばが育つのは全国的にも稀で、北広島町の独自のブランド「赤そばの里」が生まれた背景には、地域の人口減少と農業の課題を解決しようとする熱意があっ
取材で訪れた際、花畑の管理者に話を聞いた。「最初は試行錯誤の連続でした。そばは病害に弱く、標高も高いので収量が安定しない。でも、地域の仲間と協力して、年々畑の状態が良くなっています」と。花の見頃は9月中旬から下旬。その時期、高原は赤いじゅうたんを敷き詰めたような風景になる。遠くからでもその存在感は目立ち、観光客が写真を撮りに訪れる。
しかし、観光施設としては課題も見られる。TripAdvisorのレビューでは「公衆トイレがなく、汚い簡易トイレが2基(1基は使用不可)だけ」といった声も。自然を活かした観光資源として、受け入れ体制の整備が今後の課題だろう。
花畑の魅力は、ただ見るだけではない。畑から約2km離れた「かりお茶屋」では、この赤そばを100%使用した蕎麦が味わえる。2021年には、この茶屋で提供する蕎麦のすべてを赤そばでまかなうことができたという。取材時、店主が蕎麦を(RequestAnimationFrame)llう姿を見た。そば粉は赤みがかっており、打ち立ての香りが漂う。食べてみると、通常のそばより少し甘みがあり、コシも強い。天ぷらには地元の「おかのり」が使われており、初体験の食感に驚いた。
赤そばの里は、単なる観光スポットではない。休耕田を活用した持続可能な農業モデルであり、地域の食文化を再定義する試みだ。北広島町はそばの産地として知られるが、この赤そばはさらに独自性を高める。EDIT長が選定した理由にもある「意外性」と「地域性」がここに凝縮されている。
取材を通じて感じたのは、地域の人の情熱だ。髙木さんらが「赤そばの里」を築いた背景には、土地への愛着と未来への展望がある。花畑を訪れる観光客は、秋の風物詩として写真を撮るが、その裏には、数年かけて育てたそばの収穫への期待がある。
北広島町は、広島県の北西部に位置し、山に囲まれた自然豊かな地域。この赤そばの里は、そんな町の新たな魅力として、季節限定の美しさを提供している。EDIT長が指摘するように、花の見頃は限られるが、それがかえって特別感を生む。9月下旬、八幡高原を訪れ、赤い花畑の前に立てば、秋の高原の風とそばの香りに包まれる。その瞬間、北広島町の物語を肌で感じられるはずだ。
今週末、その真紅の花畑を訪れてみては? 道の駅ではカープとのコラボグッズ「神楽坊や」も販売されており、そちらも要チェックだ。赤そばの里は、自然と食と地域の暮らしが交差する場所。あなたの秋の旅に、忘れられない一ページを加えてみないか。