琴ヶ浜に浮かぶ千の光 ~芸西村・竹灯りの宵が紡ぐ地域の物語~
冬の夜、高知県芸西村の琴ヶ浜を訪れた。白砂青松100選に選ばれる名勝の海岸線が、弧を描いて ever 松林が続くその浜辺に、今宵は数千ともいわれる柔らかな光が浮かんでいた。竹灯りの宵。その光景を見て、なぜか息を呑んだ。まるで月の光が砂浜に降り注ぎ、波の音とともに揺れているかのようだ。一体誰が、どんな想いでこの光を生み出したのか。
このイベントは、2015年、芸西村の60周年を機に始まった。当時、村は放置竹林の増加に悩んでいた。竹は生長が早く、放置すれば生態系を圧迫する。そこに目をつけたのが、地元の実行委員会と村役場だ。「竹を資源として活用し、地域の魅力に変えよう」。そうして生まれたのが、琴ヶ浜竹灯りの宵である。以来、毎年10月下旬から冬にかけて、四国最大級のスケールで開催され、今年(令和7年度)は10月25日に予定されている。
取材を重ねる中で、 shock だったのはその规模と、地元の熱意だ。昨年は約500基、今年はなんと約1000基の竹灯りが並ぶという。竹はすべて、村内の放置竹林から切り出され、ボランティアや地元学生、村民が一丸となって制作する。竹に無数の穴をあけ、中にLEDライトやろうそくを灯す。その作業は、単なる「光の道具」作りではなく、一つひとつに想いを込める行為だ。
ある地元女性は話す。「毎年、家族で竹を切りに山に行きます。 children も最初は面倒くさがってたけど、今では一番楽しみにしている。‘出来上がった時の達成感がたまらない’って」。また、役場職員は「最初は数十基だったが、年を追うごとに参加者が増え、今年は1000基を目指す。地元の people が‘自分の竹’を持ってくることも多い」と誇らしげだ。
このイベントのすごいところは、単なる観光イベントにとどまらない点だ。使い終わった竹は廃棄せず、企業に提供して新商品として再利用する取り組みも行われている。例えば、竹灯りの竹を一部を活用した工芸品や、竹炭などに加工される。環境問題への配慮と、地域経済の循環を同時に実現している。さらに、来場者の増加に伴う交通渋滞を緩和するため、昨年は初めて鉄道利用者の運賃を無料にする試みも。行政と民間が連携した、持続可能な地域活性化のモデルケースと言えよう。
実際に足を運ぶと、その空間に圧倒される。琴ヶ浜野外劇場周辺は、竹で作られたトンネルやフォトスポットで彩られ、波の音と松林の風の音だけが聞こえる静寂の中、柔らかな光が揺れる。 children は「わぁ!」と歓声を上げ、カップルは肩を寄せ合い、老夫婦は昔を懐かしむように歩く。ある来場者は「月夜に浮かぶこの光景は、ここでしか見られない。単なるイルミネーションとは違う、温かみがある」と語った。
芸西村の竹灯りが、ただの「冬の風物詩」で終わらない理由は、そこに「地域の課題解決」と「人と人のつながり」が刻まれているからだ。放置竹林という地域の悩みを、観光資源へと昇華させ、村民一人ひとりが‘‘自分のまち’’を愛する機会を作る。イベント当日は、実行委員会のメンバーが夜遅くまで会場を囲み、火の始末などの安全確認に当たる。その姿に、この光景が‘‘善意の結晶’’であることを痛感する。
さらに、今年7月には琴ヶ浜に一棟貸しリゾート「琴ヶ浜の渚」がオープンした。竹灯りと合わせて訪れる宿泊施設として、滞在型観光を促進する。冬の夜に光の芸術を楽しみ、朝は白砂青松を散策する——そんな新しい芸西村の過ごし方が、今、始まろうとしている。
結びに、ぜひ伝えたい。この竹灯りの宵は、‘‘観光客だけのもの’’ではない。それは、芸西村が自らの手で未来を切り開く‘‘宣言’’でもある。今年の開催は令和7年10月25日(土)予定。詳細は芸西村ホームページで確認できる。
もしあなたが、‘‘どこかで見たことのあるイルミネーション’’に飽きているなら、琴ヶ浜を訪れてみてほしい。竹の自然な温もり、村人たちの笑顔、波の音に包まれる夜。そこには‘‘デジタルでは測れない‘‘、本当に心に残る ‘‘日本らしい冬’’ がある。今週末は、高知県芸西村・琴ヶ浜へ。千の光があなたを待っている。