スパイスが紡ぐ和水町の物語 ナゴミカレーフェスで味わう“地元の宝物”
夏の終わりの午後、和水町の田園地帯を車で走っていると、ふと鼻をくすぐる香ばしいスパイスの匂い。それもそのはず、この時期、町中のカレー店がこぞって“地元の恵み”をふんだんに使った特別なカレーを提供する「ナゴミカレーフェス」が開催されているのだ。
和水町でカレーと言えば、今や「ナゴミカレーロード」として知られる、町内の個性豊かなカレー店が連なる食のスタンプラリーが恒例となっている。その起源は、町おこしの一環として地元農産物を活用し、地域の魅力を再発信しようという試みにある。2006年に菊水町と三加和町が合併して和水町が誕生したように、このフェスもまた、町の“融合”と“独自性”を象徴する行事なのだ。
その中核をなすのが、肥後民家村にある「わさんたらんか」。スリランカとメキシコの料理を独自に融合させたカレーは、和水町の多様性を体現している。 オーナーの情熱が感じられる店内では、地元の野菜をふんだんに使ったマイルドなカレーから、スパイシーなメキシカンまで、幅広い味わいが楽しめる。スリランカカレーの繊細な香りとメキシカンのパンチの効いた味わいが、和水の風土の中で意外な調和を見せるのだ。
一方、旧小学校を改装した「大塚カレーと珈琲ユキコ」は、まさに廃校活用のモデルケース。 福岡から移り住んだユキコさんは、「平山温泉も近いし、福岡にもすぐ行けるし、和水町はいいところですよ」と、穏やかな口調で語る。ここで味わえるカレーは、地元産の豚肉「火の本豚」を贅沢に使った看板メニューが自慢。
校庭を臨むテラスで、スパイスの香りを胸いっぱいに吸い込めば、この町が育んできた歴史と自然を同時に感じられる。移住者が自分の“食”を通じて町に溶け込み、新たな価値を生み出していく姿——それが和水町の現在地だ。
このほかにも、「纹次郎」の塩ハラミカレーをはじめ、各店が和水町の米、野菜、肉を活かした独自のカレーを繰り出す。夏場はさっぱりとしたトマトカレー、秋口には地元産の栗を使った「栗カレー」も登場し、季節の移ろいを舌で楽しめる。 実は、和水町では10月に「山鹿市&和水町 栗グルメフェア」が開催され、栗カレーも提供される。カレーフェスの延長線上に、秋の味覚が息づいているのだ。
フェスの醍醐味は、何と言ってもスタンプラリー。全店制覇を目指して歩き回るもよし、お気に入りの店で何度も味わうもよし。参加者はみな、カレーを媒介に町の人々と交流し、「和水町って、こんなに面白いんだ!」と実感する。ある参加者は「4日間かけてスタンプを集め、ミニカレーをシェアしながら、常に満腹幸せいっぱいでした」とブログに綴っている。
このスタンプラリーは、和水町地域おこし協力隊が中心となって企画したものだ。Facebookでは「8件のお店を紹介してきました。どのお店も特徴があり、素晴らしいところばかりです」と、熱いメッセージを発信している。小店舗が連携することで、町全体が一つの“カレーシティ”としてのブランドを構築しているのだ。また、町長がPRした「火の本豚カレー」や「Nagomi大豆Coffee」のように、地元農業・畜産業の成果がカレーという形で升華されている。
和水町カレーフェスは、単なる飲食イベントではない。地元愛あふれる人々が、自分たちの産物を誇りに思う姿。それがカレーという“universal language”を通じて、訪れる人すべてに伝わる。政治の話題が盛んだったこの町で、こんなにも温かく、豊かな食文化が根付いていることを、私は誇りに思う。
さあ、今週末はカレーの地図を手に、和水町へ。スパイスの道を歩けば、きっとあなたもこの町の“なごみ”を感じられるはずだ。