40歳の成人式? 綾部市が仕掛ける「3040」に隠された故郷とつながる革命
「成人式」と聞いて、どんな光景が浮かびますか? 真新しい振袖やスーツに身を包み、希望通过を語る若者たち。多くの大人たちが、かつてその門をくぐった記憶を持っているでしょう。しかし、京都府綾部市では、毎年ちょっとした“異変”が起きています。30歳と40歳、「成人」からはるかに遠いはずの大人たちが、集まるのです。その名も「あやべ3040(さんまるよんまる)成人式」。
今年も開催されたその様子を、追加取材で深掘りします。
なぜ、30歳と40歳なのか?
一見、冗談のように見えるこの企画。その背景には、深刻な人口減少と「故郷とのつながり」をめぐるある事実がありました。取材で浮かび上がったのは、市が着目した「通常の成人式出席率」の高さです。毎年、20歳を迎える若者の約8割が出席する。つまり、多くの若者が一度は故郷に戻り、同級生と顔を合わせ、 adulthood を祝う。しかし、その後どうなるか? 大学や就職で都会へ出ると、故郷に戻る機会はめっきり減る。20歳のときの熱気は、30歳、40歳と歳を重ねるごとに、記憶の奥底にしまい込まれていく。
「節目ごとに帰郷の機会を設けて、『里心』を刺激したい」
ある市の担当者はそう語ります。20歳の次は30歳、そして40歳。人生の大きな節目に、あえて「成人式」と銘打つことで、ふるさとに“帰る儀式”を約束する。この発想は、単なる集まりを超え、人生のリマインダーとして機能する。
参加者の本音「卒業以来、皆の顔見てないなぁ…」
実際に参加した人々の声を聞くと、その思いは複雑で温かい。
「綾部は学生時代に通ってただけやけど、卒業以来みんなの顔見てないなぁ…」
Instagramの勧誘文には、そんな本音が並びます。都会で働き、家庭を持ち、それぞれの人生を歩んできた大人たち。しかし、体内に埋まった「同級生」という共通項は、土地を離れても消えない。3040成人式は、その latent(潜在的な)つながりを一気に活性化するスイッチなのです。
ブログ「まんまるうさぎ」の作者は、参加後すぐに中学の同級生と食事会を開いたと綴ります。
「20年ぶりとかでも、喋りだすとその時のままな感じ! だけど話す内容は大人になったなって感じで」
時間と距離が経っても、共有した時間は土壌として残る。そして、その土壌の上に、今の自分たちの-Story- が積み重なる。この体験は、単なるノスタルジーではなく、「私たちは同じ時代を生きた仲間だ」という確かなアイデンティティの再確認なのです。
地域を盛り上げる「私たちの世代」
面白いのは、このイベントが単なる“思い出づくり”で終わらない点です。
「私たち世代が地域を盛り上げていく」
参加者が口にしたこの決意。イベント後的には、市内の飲食店を巡る「飲食店巡りスタンプラリー」などの特典も用意され、経済効果も意識されています。市長の四方源太郎氏はnoteで、
「ふるさと綾部を愛し、同世代のつながりを深めて、市内の飲食店を利用してもらえるきっかけ作りとして市が支援」
と明言。つまり、3040成人式は、「人と人をつなぐことで地域経済を循環させる」仕掛けなのです。かつての同級生が「大人」として帰ってくる。その大人たちは、子連れで来る。彼ら彼女らが市内で食事をし、買い物をする。その一举手一足が、小さな町の商店や餐厅を支える。人口減少に抗う、具体的で温かい戦略です。
全国唯一? それともモデルケースに?
「30代、40代を対象にした成人式」は、全国的にも極めて珍しい取り組みです。この「意外性」こそが、メディアでも取り上げられる理由でしょう。しかし、その裏にあるロジックは明快です。
- つながりの維持: 人生の節目で同級生と再会する機会を強制的に設ける。
- 里心の定着: 故郷を「思い出す」から「愛する」へ昇華させる。
- 経済波及: 参加者とその家族の消費を地域内に呼び込む。
- Uターン・Iターンの種まき: 久しぶりに帰った町の“今”を見て、移住を考えるきっかけを作る。
これは、高齢化と人口減少が進む日本の地方都市が直面する「コミュニティの溶解」に対する、一つの回答を示しています。縁故主義や speculation ではなく、「同級生」という平等で強固な絆を媒介にする。誰もが「元同級生」という身分で帰れる場所。それが「3040成人式」の本質かもしれません。
さあ、次はあなたの番です
「私も参加してみたい」と思った方、来年度の参加資格は、2025年度中に30歳または40歳になる、綾部市在住者または出身者です。
詳細は、綾部市公式ホームページの**【参加者募集】市制施行75周年記念あやべ3040成人式**ページを確認してください。もし条件に当てはまるなら、迷わず申し込むべきです。懐かしい顔、変わらない景色、そして“大人になった自分”を再発見する旅が待っています。
地方都市が、「人」を中心にした新しいつながりを模索する。綾部の3040成人式は、その小さくも確かな一歩です。あなたの故郷にも、そんな“逆転発想”の儀式があってもいいのではないでしょうか。
(参考・引用元:京都新聞、朝日新聞、毎日新聞、綾部市公式サイト、綾部市長note、etc.)