ネコが結んだ、村と移住者の縁
群馬県榛東村の一角に、小さな保護猫カフェがひっそりと佇む。看板には「Cafe La'rc en chats(ラルコンシャ)」とある。ここは、都会の喧騚を離れ、新たな人生を歩み始めた夫婦が、自宅の隣に建てた猫と人間の触れ合いの場だ。
店主の松村美貴子さん(73)と和良さん(78)は、30年間暮らした横浜市から6年前、榛東村に移住した。きっかけは、和良さんが退職を機に「自然の中で暮らしたい」と願ったこと。美貴子さんは「最初は不安でした。知り合いもいない、言葉も通じないかもしれない。でも、この村には『ネコ』という共通言語があったんです」と振り返る。
移住後、美貴子さんは村の野良猫の悲惨な状況を知る。虐待の可能性も指摘され、村では「餌やりには注意喚起」の回覧を配布するほど、地域課題として認識されていた。(イメージ画像)
「 simply feeding stray cats can create problems. 村の保健事業課によれば、無責任な餌やりは猫の健康を害し、虐待を招くリスクもあるという。美貴子さんは「ただかわいがるだけでなく、責任を持つこと」を説き、保護活動を始めた。その一環として、2025年7月に念願の保護猫カフェをオープン。完全予約制で、ランチやスイーツを楽しみながら、譲渡前の猫たちと触れ合える空間を提供している。
カフェは、単なる飲食店ではない。猫の里親募集の窓口であり、移住者と地元住民をつなぐ「コミュニティ・ハブ」でもある。美貴子さんは「ネコが话题になれば、人と人が話すきっかけになる。移住者は『猫好き』という共通点で地元の人に声をかけやすくなる。逆に、地元の人は『あそこの猫カフェ』を通じて、移住者の存在を知る。これが『縁』です」と語る。
実際、カフェを訪れる客は、地元の高齢者から若い移住者、さらに県外からも訪れる。先日は、村のふるさと納税返礼品の撮影会がカフェで開かれ、その様子が全国的に報道された。(イメージ画像)榛東村は、返礼品に地元産品と並んで「保護猫カフェのランチチケット」を選べるようにした。猫を介した地域の魅力を、全国に発信するユニークな試みだ。
この動きは、村の公式LINEアカウント開設にもつながっている。自治体専用クラウドサービス「GovNext」を活用し、猫関連の情報やイベントを発信。(イメージ画像)「行政と市民、移住者が同じプラットフォームで猫を通じてつながる。これは榛東村ならではのモデルケースだ」と、地方自治に詳む関係者は指摘する。
美貴子さん夫妻の家には、常時10匹前後の猫が暮らす。年老いた和良さんは「猫の世話は大変ですが、毎日がにぎやかで、生き生きします。村の人たちも『あの猫たちは元気か』と気にかけてくれる。孤独を感じたことは一度もありません」と笑う。移住者と地域社会の摩擦は、地方ではよく聞く話。しかし、ここでは猫が「触媒」となり、新たなつながりを生み出している。猫の生態は季節ごとに変わる。夏は涼しい室内で、冬は日差しを求めて窓辺に集まる。カフェの営業時間もそれに合わせて調整するなど、自然のリズムに寄り添った営みが、村の時間をゆっくりと刻む。
榛東村は、群馬県南部のベッドタウンとして発展してきたが、移住者受け入れを積極的に推進。(イメージ画像)「移住マップ」では、自然環境やコミュニティの温かさをメリットとして挙げる。その中で、保護猫カフェの存在は、単なる施設ではなく、「地域の絆を可視化する象徴」として機能している。
美貴子さんは言う。「ネコは何も語りません。でも、その存在だけで、人が集まり、話が生まれる。日本の地方が抱える『関係性の希薄化』という課題に対して、こんな小さな生き物が答えのヒントをくれるなんて思ってもみませんでした」
今週末、あなたも榛東村を訪れてみては。カフェで猫と過ごす時間は、移住者と地元民が交差する「縁」の现场そのものだ。予約はお早めに。そして、もし気になる猫がいれば、里親になるという「第二の縁」も待っている。
(参考:上毛新聞『暮らしてみれば 移住者の現在地』)