銚子の diamonds!アフロきゃべつが紡ぐ農業エンタメ
春の訪れを告げるキャベツがある。その名も「アフロきゃべつ™」。千葉県銚子市のとある農家で生まれたこの野菜は、まるでふわふわのアフロヘアーが生えたような独特のシルエットが印象的だ。まず、その姿に驚く。一般的なキャベツがきっちりと結球するのに対し、アフロきゃべつはゆるやかに広がり、少し無造作に見えるその形が、かえって愛らしい。
この野菜を生み出したのは、株式会社くるくるやっほー代表の坂尾英彦さん。12代続く農家の跡継ぎとして、昔ながらの農業に疑問を抱き、一歩を踏み出した。「農業をエンターテインメント化する」という言葉通り、彼の挑戦は止まらない。Hennery Farm(へねりーふぁーむ)と名付けた農場では、収穫体験、パン焼き、野菜の直売所を設け、2019年には古民家を改装した宿泊施設までオープンさせた。地元食材を使った貸切レストランも併設し、銚子の食文化をまるごと体験できる場所へと変貌させたのだ。
では、肝心の味はどうか。ある農業体験記にはこうある。「思わず『キャベツってこんなに美味しかった?』と驚くほど。パリッとした食感、口いっぱいに広がる甘みと旨味――千切りにせず、そのままでも立派な一品になる美味しさ」。さらに、一般的なキャベツの2.5倍のミネラルが含まれているという。その秘密は銚子の環境にある。海に囲まれたこの地では、潮風が運ぶミネラルが土壌を豊かにし、野菜に「天然ミネラル仕込み」の深い味をもたらす。まさに海風の贈り物だ。
この「美味しさ」と「見た目のインパクト」が、都市部の飲食店の目に留まった。2025年春、大手ビアレストラン「キリンシティ」の期間限定メニューに採用され、2年連続で登場を果たしている。これは単なる偶然ではない。坂尾さんは加工品開発にも情熱を注ぎ、代表的なのが「アフロきゃべつ餃子」だ。
餡の半分がキャベツでできたこの一品は、地元・銚子雙葉町に専門店「AFRO GYOZA SHOP」まで生み出した。冷凍餃子としてローソンなどでも販売され、TBSラジオでも紹介されるなど、その波及力は大きい。
「アフロ」というネーミングの絶妙さも見逃せない。ユーモア溢れる名称は、SNSで拡散されやすく、農業というハードルの高い分野を、誰もが親しみを持てる「エンタメ」へと昇華させる触媒となった。春の期間限定性が「今だけ」の希少価値を生み、首都圏の飲食店での採用が、地元ブランドの認知度を一気に押し上げる構造ができあがっている。
この動きは、単なる crops の販売を超え、「銚子という土地そのものの価値向上」に貢献し始めている。観光客は「アフロきゃべつ」を目当てに銚子を訪れ、農場で収穫体験をし、宿に泊まり、地元の海の幸と合わせて食す。農業と観光、食が循環する小さな経済圏が、坂尾さんの情熱とユニークな商品開発によって町に生まれつつある。
春が近づく今、東京のキリンシティではまたもやアフロきゃべつを使ったメニューが並ぶ。その裏側には、銚子の潮風を浴びて育った野菜と、それを「エンタメ」に変えた男の弛まぬ挑戦がある。農業は地味で継続が命と言われるが、そこにユーモアとエンターテインメントのスパイスを加えれば、地域を照らす明るい光になる。
さて、今週末はどこに行こうか。東京で春の味を楽しむのもいいが、その源头を訪ねて、銚子の海風に吹かれながら、ふわふわのアフロきゃべつを実際に収穫し、その甘さに驚いてみてはどうか。Hennery Farmでは、きっと野菜がこんなに美味しかったのかと、食への感謝が新たになるはずだ。