巨人・泉口友汰が語る御坊市への愛
読者諸君、想像してほしい。東京の巨大球団・読売ジャイアンツのユニホームに身を包み、リーグを代表する遊撃手としてゴールデングラブ賞を獲った選手が、和歌山県の片隅にある人口約2万7千人の小さな市を、身を粉にして盛り上げようとしている姿を。
それが、御坊市出身の泉口友汰選手(26)だ。2026年3月7日、彼は地元・御坊市の「シティプロモーション大使」に委嘱された。京セラドーム大阪で行われたオリックス戦前の式典で、背番号35は緊張した面持ちで委嘱状を受け取り、「とても光栄な役割を担わせていただくことを誇りに思う。自分の頑張りで御坊市を盛り上げていきたい」と本音を吐露した。
■「心が浄化された」母校への凱旋
ambassador就任の背景には、泉口選手と故郷の深い絆があった。昨年12月、社会貢献活動「G hands」の一環として、彼は御坊市立野口小学校を訪れた。母校の体育館には手作りのイラスが飾られ、全校児童95人が温かい拍手で迎えた。キャッチボールをしたり、給食を一緒に食べたり。児童からのサプライズ応援歌に感激し、「すごく応援してもらっているなと肌で感じた。身が引き締まる思いだ」と語った。
「懐かしい。僕が通ってた当時からあんまり変わっていなくて。なんか凄く心が浄化されました」と振り返るその言葉には、プロとしての重圧から解放され、原点で得た純粋な喜びがにじむ。子どもたちへのメッセージはシンプルだった。「自分の好きなことを頑張り通すことが大切。僕も野球が好きだからここまで頑張ってこれた」。その本音は、御坊市の未来を担う若者たちへの最高の激励となった。
■市の「誇り」が大使に就任
この大使就任は、御坊市が市制施行70周年を機に、新たなシティプロモーションを展開する一環だ。三浦源吾市長は「御坊市に明るい話題を届けていただいた」と感謝し、「これを機にふるさと御坊市を全国に発信していただければ大変うれしい」と期待を寄せた。
実は、就任依頼は昨年12月の地元凱旋時に既に行われていた。市長が直々に「御坊市の誇り」と声をかけ、泉口選手は快諾。彼の活躍は、小さな町にとって大きな光だ。昨季は打率3割1厘(リーグ2位)を記録し、ベストナインとゴールデングラブ賞をダブル受賞。社会人野球・NTT西日本を経て2024年に巨人入りした苦労人として、その挫折と努力のストーリーは多くの人を感動させる。
■御坊市の魅力を全国へ
大使としての活動は多岐にわたる。メディアを通じた情報発信に加え、オフシーズンには御坊市との連携事業も検討される。既に、市役所1階みやこ姫ロビーでは、泉口選手のパネルやサイン入りユニホーム、プレー写真などが展示され(10〜19日)、市民の誇りを具現化している。
御坊市の特産品をアピールするオリジナルキャラクター「スターチュス」も诞生。市特産の花・スターチスを採り入れたこのキャラに、泉口選手がぬいぐるみを手に笑顔を見せた。花畑が広がる御坊の田園風景——。それは、彼が育った故郷の原風景そのものだ。
■巨大球団と小さな町の「あり得ない組み合わせ」が生む力
なぜ、このギャップがここまで注目されるのか? 巨人という日本プロ野球を代表する巨大球団の選手が、人口わずか2万7千人の自治体の大使に就任する。一見、不釣り合いな組み合わせだが、それこそが現代の地方創生が求める「 stumbling block(障害)ではなく stepping stone(踏み石)」の好例だ。
泉口選手の「本音」——「自分の頑張りで御坊市を盛り上げていきたい」という言葉は、 overwhelmingly sincere(圧倒的に誠実)だ。彼は御坊市を「盛り上げる」のではなく、「盛り上げていきたい」と継続的な関わりを誓っている。その姿勢が、市民の愛着と誇りを醸成し、全国への認知度向上につながる。
実際、SNS上では「御坊市出身の泉口選手が大使に就任!」という投稿が拡散し、和歌山県内外から祝福の声が寄せられている。地元の子どもたちは、プロ野球選手との直接交流を通じて「夢は叶う」という実感を得た。
■今、御坊市で何が起きているか
この動きは、単なる選手のボランティア活動ではない。御坊市が進める「シティプロモーション」の核心は、泉口選手という「人」を媒介に、地域の魅力を物語として伝えることだ。
野球が盛んな和歌山県——。御坊市は、高校野球の名門・星林高校(旧・御坊商)など、野球環境も整う。泉口選手は野口小から野球を始め、御坊市の自然の中で育まれた根性と技術が、現在の活躍の礎となった。
大使活動を通じて、彼は御坊市の「何」を発信するのか? おそらく、花「スターチス」の鮮やかな紫色に包まれた田園風景。清流・熊野川が育む豊かな自然。そして、子どもたちが夢を持つことのできる地域コミュニティの力——。すべてが、彼の原点だ。
■あなたも、御坊市の物語を歩こう
野球シーズンを迎え、泉口選手は巨人の遊撃手として还是会場を沸かせる。一方で、故郷・御坊市への想いは募るばかりだろう。
今週末、もし和歌山県方面へ足を延ばす機会があれば、ぜひ御坊市を訪れてみてほしい。
御坊市役所を訪れ、泉口選手のサイン入りユニホームを見つけるもよし。夏場なら、スターチス畑が紫色に染まる美しい景観を体験するもよし。野口小学校に足を運べば、彼が育った場所で、今も元気に走り回る子どもたちの姿があるかもしれない。
巨人のユニホームと、御坊市の花畑。 このかけがえのない「つながり」が、地方創生の新しい形を教えてくれる。
小さな町の大きな大使が、今、走り続ける。