神戸で出会う、クジラの島の鼓動
神戸の水族館「アトア」の薄暗い空間に、ふと目をやると、そこには信じられないほどの大きさの影があった。全長約12メートル。海の中でしか見たことのなかったザトウクジラの実物大の姿が、陆の展示スペースに静かに sideways している。その瞬間、私の呼吸は少し速くなった。まるで、冬の座間味村の海から、タイムスリップしてきたかのようだ。これは2026年1月30日から同水族館で開催される、沖縄県座間味村とのコラボ企画展「クジラの島から ~átoa × zamami vill × pokke104~」のハイライトだ。!
では、なぜ遠く離れた神戸の水族館に、坐間味村のクジラが「上陸」したのか。その背景には、島の冬を彩る神秘的な生態と、それを守り続ける人々の強い想いがあった。座間味村は那覇から西へ約40km、東シナ海に浮かぶ島々からなる自治体だ。冬になると、ザトウクジラが越冬のために集まってくる。その数は時として数百頭に及ぶといわれる。島の海は、彼らが長い旅の途中に休息し、子育てをする貴重な場となっている。しかし、その姿を肉眼で、しかも間近で観察できる機会は、実際に島を訪ねない限り、めったにない。企画展は、その「非日常の体験」を、艺术作品と科学的な展示を融合させて、幅広い世代に届けようとする試みだ。
会場を進むと、実物大クジラの周囲には、島の海で撮影された写真や映像が並ぶ。冬の透明度の高い海に、悠々と泳ぐザトウクジラの群れ。子クジラが母クジラのそばを泳ぐ微笑ましい様子。背中に-linked するホエイストーリー(鯨歌)の保護。写真家や水中カメラマンが捉えた一瞬一瞬が、スクリーンに投影され、会場を「海」に変えていく。ここには、クジラだけではない。珊瑚や海藻、色とりどりの魚たち、時にはマンタやウミガメの姿も。冬の座間味の海は、一見すると静かだが、実は生物多様性の宝庫なのだ。その生命力が、壁面に広がる映像を通して、来場者に直接語りかけてくるようだ。!
さらに、企画展のユニークな点是は、単なる写真展や生物展示に留まらないことだ。座間味村の観光大使を務めるイラストレーター、pokke104(ぽっけいちまるよん)氏の作品が、展示に彩りと物語を加える。pokke104氏のアートは、実在する生きものの描写に、ユーモアと愛嬌を交えた独自の世界観が特徴だ。クジラが楽しそうに笑っていたり、 other marine creatures が仲良くしている様子が描かれた作品は、科学的な展示とはまた違った、島の海への親しみを感じさせる。彼の作品は、島の人々が自然と共に生き、その生態を暖かい目で見ていることを伝えてくれる。会期中には、pokke104氏によるライブペインティングも実施され、その様子も会場で楽しめる。完成した作品は、フォトブースとして来場者が記念撮影できるスペースになる予定だという。アートは、島と神戸、来場者と島の自然を結ぶ、もう一つの「触媒」となっている。
しかし、座間味村の魅力は、この美しい海とクジラだけではない。その歴史の重さも、島の魅力の深さを構成している。元ニュースにあったように、座間味村は沖縄戦において、悲劇的な集団自決の舞台となった島でもある。80年目の慰霊祭が営まれたことも報道されている。島には、その歴史を語り継ぐ場所や記憶が今も根付いている。この企画展は、クジラと自然の美しさを通じて、島の現在の魅力を伝えるが、それは長い歴史と苦難の上に成り立った、平和で豊かな島の姿でもある。クジラが悠々と泳ぐ海は、かつての悲劇を乗り越え、島民が大切に守り育ててきた自然の結晶だ。そのことに想いを馳せることも、この展示から得られる深い学びの一つだろう。
この企画展の真の価値は、「距離」を超える体験を提供することにある。普段、座間味村の冬の海を訪れることは、多くの関西在住者にとって簡単ではない。交通費、時間、体力的な負担…。だが、神戸の街中で、実物大のクジラの前に立ち、島の写真に目をやるだけで、あの透明度の高い海と、そこに息づく巨大で優しい生物たちのことを、ぐっと身近に感じられる。これは、地域資源をデジタルやアートの力で再構築し、地方の魅力を都市部に発信する最先端のモデルケースと言える。アトアの「AQUARIUM×ART」というコンセプトが、科学的な aquarium と emotional な art を両立させ、単なる情報伝達を超えた「体感」を生み出している。
会場には、座間味村の PR ブースも設けられ、島へのアクセスや宿泊、他の名所、出会える生きものなどの情報が提供される。来場者がこの展示で胸を打たれ、「次は実際に島に行ってみたい」と感じるきっかけになることを、主催者も強く願っているに違いない。
今週末、神戸に出かける予定はないか?あるいは、ふと休日に「どこか行きたい」と思ったなら、ぜひ神戸ハーバーランドのアトアを訪れてみてほしい。暗くなった水槽の前に立ち、実物大のクジラの姿を見上げ、壁に映る島の海の映像を見つめていると、遠い南西の島から届く、自然の息吹と人々の想いが、確かにそこに感じられるはずだ。これは、神戸で味わう、小さながら深い「島体験」だ。クジラの背泳から、座間味村の、そして私たち一人ひとりの、海との関係性を考えさせられる、そんな時間になるだろう。
企画展は2026年1月30日から3月1日まで開催。詳細は公式サイトで確認できる。