安来節、九州に舞う~継承への挑戦
───どじょうをすくうような、軽やかで妖しげなリズム。島根・安来の民謡『安来節』が、今秋、北九州市で公演を行うという。保存会支部すらない地での開催は、伝統文化の継承という切実な課題を背負って。
安来節のルーツは、江戸時代中期にさかのぼる。七七七五調の歌謡音曲が、北前船でにぎわう安来港で佐渡おけさや追分節と交流し、天保年間の芸妓『おさん』が唄った『さんこ節』、嘉永年間の鍼医・大塚順仙の改良を経て、独自の節回しへ。明治期には、唄の名手・渡部お糸がレコードを出し、全国を巡業。正調安来節保存会(1911年設立)が生まれ、『どじょうすくい踊り』と一体化して民衆に浸透した。
しかし、時は流れ、少子高齢化の波は伝統文化にも襲う。安来節保存会は、県外には愛好者がいるものの、安来市内での支部はなく、後継者不足が課題だ。『正調』の維持だけでは、文化は死ぬ。そう感じた安来市は、『民謡王国』九州に目をつけた。九州は、民謡が生活に根付く土地。博多っ子も熊本っ子も、唄と踊りが血のなかにある。そこで、今秋、北九州市などで公演を計画。支部なしの『遠征』で、新たなファンを掘り起こそうとしている。
追加取材で見えてきたのは、安来節が『生き物』である証しだ。安来節演芸館では、週末に公演が行われ、『子ども神楽』の舞台に大人も涙する。ある客の感想──『神楽の神々しさと、安来節の陽気でもの哀しいリズムが交わって、胸に迫った』。演芸館の公演案内には『その場に応じて即興的に唄われることも』とあり、自由度が高いのも特徴。
SNSでは、『安来節』の評価が1週間ごとに動く(tsuiran.jp)。最多属性は『30〜40代男性』で、一緒にツイートされるワードは『どじょうすくい』『民謡』『島根』。郷土愛がにじむ。また、Instagramでは、楽曲プロデューサー・RAM RIDERさん、コレオグラファー・KARINさんとコラボした『NEO安来節』が披露され、市役所職員もダンスで参加。『伝統と現代の融合』を狙う試みも。
歴史的に見れば、安来節は『交流』で発展した。北前船が運んだ民謡が混ざり合い、新しい節が生まれた。ならば、九州という『民謡の交差点』で展開するのは、本質に戻る行為だ。保存会支部がないからこそ、『地方発信』の柔軟性がある。現地の団体とコラボし、ワークショップを開けば、継承の輪は広がる。
課題は、九州の民謡シーンにどう飛び込むか。博多祇園山笠のリズム、鹿児島の『よさこい』、熊本の『火の国太鼓』──それぞれにアイデンティティがある。安来節の『七七七五調』と『どじょうすくい』の踊りをどうアピールするか。公演では、単なる披露ではなく、『体験型』が鍵になるろう。観客に軽く手を動かしてもらい、リズムを体に覚えこませる。
山陰中央新報の記事(下記URL)が伝えるように、市は『継承へ会員募集』も強化する。九州公演を機に、県外からの入会が増えれば、保存会の活性化につながる。『安来節は、安来だけのものではない』──そう胸を張って、九州の地に躍り出る。
今秋、北九州市に足を運ぶ機会があれば、ぜひ観衆の列に加わってほしい。三味線の音と、どじょうをすくうしぐさの踊り。そこには、200年以上受けつがれる『生きるリズム』がある。安来から遠く離れた地で、その鼓動を感じるとき、伝統は『過去の遺物』ではなく、『未来への種』であることがわかるだろう。
───終わりに。安来節演芸館では、週末に公演が行われている(火曜休館)。公式サイトでスケジュールを確認し、島根の地元の Breath を感じに行くもよし。九州公演の詳細は、安来市公式サイトをチェックだ。