長野の風が奏でるメロディー 藤澤涼架と街の絆
善光寺の石段を上る朝、澄んだ空気に包まれた長野市。この街のどこかに、今や全国の若者たちを熱狂させるバンドの“心臓部”がいることをご存じだろうか。Mrs. GREEN APPLEのキーボード・フルート担当、藤澤涼架さん。その出生地は、この長野市だ。
藤澤さんの姿を追うと、長野市立柳町中学校の吹奏楽部でフルートと出会った一人の少年がいる。当初はパーカッションに憧れていたが、適性検査でフルートに。その音色が、のちにバンドの繊細なサウンドの礎となる。小諸高校への進学後、音楽への情熱はさらに燃え上がり、上京を経て2013年、運命的な出会いが訪れる。バンドのボーカル大森元貴さんが「名前も知らない、楽器を弾いている姿も見たことがないのに、人柄がいいなと思って声をかけた」という。その日に「僕とバンドを組めばメジャーデビュー99%できるから」と誘い、藤澤さんは「いいよ」と答えた。この柔軟な決断が、今では日本武道館を満員にするバンドの結成につながる。
地元・長野への愛は、ただの「出身」の範疇を超える。2025年11月、藤澤さんは文化・スポーツ活動で社会に貢献した長野県ゆかりの個人に贈られる「第30回 信毎選賞」を受賞。ラジオ番組「SCHOOL OF LOCK! ミセスLOCKS!」で「長野が育ててくれた」と語り、感謝の想いを口にした。さらに、今年の夏には2つの母校、柳町中学校と小諸高校を訪問。生徒たちに「モヤモヤする青春が今のキラキラを作った」とメッセージを送った。これは、単なる凱旋ではなく、自らのルーツを再確認し、未来を担う若者との対話だ。
そうした地元愛は、形を変えて実を結ぶ。Mrs. GREEN APPLEは2024年、青森県と長野県の「グリーンアップル大使」に就任。両県のりんご消費拡大を応援し、10周年ロゴシールが貼られた青りんごが店頭に並んだ。藤澤さんの長野市出身という関係性が、バンド全体の活動に地域色を宿す。冠番組「テレビ×ミセス」のレギュラー放送が決定したことも、ファンの間で大きな話題に。番組ではSuperflyやFRUITS ZIPPERらとのコラボレーションが披露され、藤澤さんは収録中に涙を見せるほど化学反应を楽しんだ。
長野市の街を歩くと、藤澤さんの「モヤモヤ」と「キラキラ」の軌跡が重なる。柳町中学校の吹奏楽部室には、今もフルートの音色が響くのだろうか。小諸高校への道のりは、電車で30分ほど。りんご畑が広がる風景の中、彼が音楽への夢を育んだに違いない。
善光寺の参道で、ふと耳を澄ませば、遠くで聞こえるかのようなMrs. GREEN APPLEのメロディー。この街の空気が、繊細でエネルギッシュなサウンドを生んだのかもしれない。
今週末は、長野市を訪れてみては。柳町中学校の前で、りんごをかじりながら、藤澤涼架という一人のミュージシャンが、この地から世界へ飛び立つまでの物語に想いを馳せる。きっと、善光寺の石段を上る足取りも、少し軽く感じられるはずだ。