column

硬いタケノコがメンマに変わる日

硬いタケノコがメンマに変わる日

春の訪れを告げる食材、タケノコ。柔らかくて香り高い新鮮なタケノコは、多くの人に愛されている。しかし、湧水町には「育ちすぎたタケノコ」という、一見食べられないように見える食材を救う取り組みがある。その名も「一石二鳥の解決レシピ」。これは単なる食の工夫ではなく、地域の課題解決につながる画期的な試みなのだ。

湧水町は鹿児島県の中央北端に位置し、豊かな湧水と肥沃な土地に恵まれた町だ。町名の由来となった竹中池や丸池からは、年中冷水が湧き出し、水田灌漑用水として利用されている。そんな自然豊かな湧水町で、タケノコは重要な特産品の一つだ。

鹿児島県は全国でも有数のタケノコ生産地であり、その地位はタケノコ生産によって支えられている。温暖な気候に恵まれた湧水町では、全国で最も早い「早掘りタケノコ」の収穫が10月中旬頃から始まる。この早掘りタケノコは、シャキシャキとした食感とアクが少なくえぐみがないのが特徴で、湯がくと栗のような味がするという。

しかし、タケノコにも旬がある。通常、タケノコの旬は3月下旬から4月上旬ごろ。この時期を過ぎると、タケノコはどんどん成長し、硬くなっていく。高さ2〜4メートルに成長した幼竹は、すぐに親竹になり、地下茎を伸ばして竹林が広がるため、伐採される運命にある。しかし、この硬いタケノコは山に残され、有効活用されることなく廃棄されていたのだ。

そこで湧水町が取り組み始めたのが、育ちすぎたタケノコをメンマに加工するプロジェクトだ。2022年の竹林面積は425ヘクタールで、11年の298ヘクタールから約1.4倍に増加。放置竹林の解消と、未利用資源の有効活用を狙うこの取り組みは、まさに「一石二鳥」の解決策と言える。

育ちすぎたタケノコをおいしく食べる魔法のレシピ

4月26日、湧水町農畜産物開発加工センターで「育ちすぎたタケノコでメンマづくり」体験会が開催された。約20人が参加し、比較的柔らかい幼竹の穂先部分の皮をむいてカットし、ゆでると甘い香りが漂った。参加者たちは、硬いタケノコがメンマに変わる過程に驚き、そのおいしさに感動していた。

この取り組みは、単に食材を無駄なく利用するだけでなく、地域の課題解決にもつながっている。放置竹林の解消は、防災面でも重要な意味を持つ。竹林が適切に管理されないと、台風などの際に倒木の危険性が高まり、周辺地域に被害を及ぼす恐れがあるからだ。

また、タケノコの有効活用は、地域経済の活性化にも寄与する。メンマという新たな特産品の開発は、農家の収入源の多様化につながり、町全体の活性化に貢献するだろう。

湧水町の取り組みは、他の地域でも参考にできるモデルケースだ。日本全国には、さまざまな地域課題が存在する。しかし、湧水町のように地域の特性を活かし、創意工夫を凝らすことで、その課題を解決に導くことができるのだ。

春の訪れとともに、タケノコの季節がやってくる。柔らかくて香り高い新鮮なタケノコも良いが、硬くなったタケノコがメンマに変わる過程も、また魅力的だ。湧水町を訪れ、その一石二鳥の解決レシピを体験してみてはいかがだろうか。きっと、新たな発見と感動が待っているはずだ。

この春、湧水町のタケノコに注目してみてほしい。硬いタケノコがメンマに変わる日。それは、地域の課題解決と食のイノベーションが出会う日でもあるのだから。

この地域のビジネスデータを見る

📍 湧水町の開業ガイドへ