上峰町の「なないろのたね」が紡ぐ母子防災の新たなカタチ
災害は突然やってくる。そしてそのとき、最も脆弱な存在は誰か。それは、小さな命を背負い、不安と戦いながら避難しなければならない母子たちだ。上峰町で昨年誕生した自主防災組織「こどもとママ防災なないろのたね」は、そんな母子の安全を守るために立ち上がった。
「妊婦さんや子育て中のママから、『災害時にどう避難すればいいのかわからない』という声が聞こえてきたんです」。そう語るのは、なないろのたねの会長・龍聖子さん。助産師や保育士など、子どもと母親の安全を守るプロフェッショナルたちが集まり、昨年8月に結成。9月に町の認定を受け、地域の防災の新たな担い手として活動を始めた。
母子が直面する防災のリアル
18日、上峰町民センターで開かれた初めての防災講座。参加したのは、親子連れを中心に約20人。講師から伝えられたのは、母子ならではの避難のポイントだった。
「災害時、赤ちゃんを低体温やほこりから守るため、授乳用のケープなどで頭を覆って避難してください」。この一言に、参加者たちは思わずうなずいた。日常の授乳ケープが、いざというとき命を守る盾になるとは。
さらに驚いたのは、避難時の持ち物に関するアドバイスだ。「ベビーカーは使わず、赤ちゃんと防災リュックは合わせて10キロまでに」。これは、避難経路の安全確保と、母親の体力を考慮した具体的な指針。普段何気なく使っているベビーカーが、避難時には危険因子になり得ることを、改めて認識させられた。
日頃の備えが命を救う
講座では、避難所での過ごし方についても学んだ。乳幼児を抱える母親にとって、避難所生活は想像以上のストレスが伴う。授乳スペースの確保、ミルクの調乳、おむつ交換。普段の生活が一変する中で、子どもの安全と健康をどう守るか。
「日頃から子どもと一緒に避難所まで散歩してみてください」。このアドバイスは、参加者たちにとって目から鱗だったようだ。実際に避難経路を歩き、危険個所や所要時間を把握しておくことで、いざというときの不安が大幅に減る。
地域の力で母子を守る
なないろのたねの活動は、防災講座にとどまらない。今後は妊産婦や子育て中のママを会員として募り、妊産婦を始めこどもの成長発達に合わせた防災知識の普及や啓蒙、相談体制の整備、心と体のケア要領を含めた防災訓練や研修を行っていく予定だ。
「町内では大字前牟田地区の自主防災組織に次いで2番目の組織ですが、私たちの特徴は『母子』に特化していること。これは佐賀県内でも珍しい取り組みです」と龍さんは胸を張る。
母子防災のこれから
なないろのたねの活動は、単なる防災知識の伝達にとどまらない。地域のつながりを深め、母子を取り巻く環境を安全なものに変えていくという、より大きな目的がある。
「災害はいつ起こるかわからない。だからこそ、日頃から備えておくことが大切です。そして何より、『一人じゃない』という安心感を持ってほしい」。龍さんの言葉に、参加者たちは真剣な表情で耳を傾けていた。
上峰町の「なないろのたね」は、これからも母子の安全を守るために活動を続けていく。その活動は、地域の防災意識を高め、より安全な社会を築く一助となるだろう。私たちも、自分たちの地域でできることを考え、行動に移していかなければならない。
災害時に母子を守るために、あなたは何ができますか?