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73.5歳のロック魂、阿蘇の山間に響く

73.5歳のロック魂、阿蘇の山間に響く

70代後半でギターを握り、ステージに立つ。平均年齢73.5歳のロックバンドが、熊本県阿蘇郡高森町で結成50周年を迎えた。山あいに響く激しいロックサウンドは、高齢者のイメージを覆す意外性と、音楽を通じた地域活性化の可能性を秘めている。

高森町は阿蘇の玄関口に位置し、豊かな自然と歴史文化に恵まれた町だ。しかし、高齢化率は50%を超え、人口減少が進んでいる。そんな町に、新たな息吹をもたらす存在が現れた。

「ロックは若者のもの」という常識を覆すバンド。メンバーは60代から80代まで、平均年齢73.5歳。半世紀前、高校の軽音楽部で出会った仲間たちが、再び集まり音楽を奏でる。結成当時はビートルズやストーンズに憧れ、エレキギターやドラムを手にした。しかし、就職や結婚でバンドは解散。それぞれが家庭を持ち、会社勤めに励んだ。

そして、還暦を迎えた頃、ふと音楽への情熱が蘇る。「もう一度、あの頃の夢を追いかけたい」。そう思い立ち、再び集まった仲間たち。練習場所は公民館、楽器は中古のエレキギター。音楽理論はほとんど分からないが、体に染みついたリズムとメロディーは忘れていない。

週に一度の練習は、メンバーにとってかけがえのない時間だ。「練習中は、年齢も性別も関係ない。音楽に没頭できる至福の時間」と、ギターを弾く田中さん(76)は語る。ドラムを担当する佐藤さん(82)は、「体力は衰えたが、リズム感はまだまだ健在。観客を沸かせる演奏ができる」と自信を見せる。

バンドの演奏は、地元住民から熱狂的な支持を受ける。「若者のようなエネルギーに圧倒された」「こんなにカッコいいおじいちゃんたちがいたなんて」。観客の感想は、バンドへの称賛に満ちている。町内のイベントや老人会の集まりで演奏する機会も増え、地域の活性化に一役買っている。

しかし、バンドを続けることは決して容易ではない。メンバーの体力は年々衰え、練習時間も限られる。楽器の故障や持病の悪化も悩みの種だ。それでも、音楽への情熱は衰えない。「この年齢になっても、まだまだ成長できる。音楽は人生の活力源」と、ボーカルの山田さん(79)は語る。

バンドの存在は、高齢者の生きがいや社会参加の重要性を示している。音楽を通じて、地域とつながり、自己実現を果たす。それは、高齢化社会における新たなモデルケースだ。

バンドの写真

高森町では、バンドの活動を応援する動きも広がっている。町の文化振興事業として、バンドの演奏会を開催する計画もある。「高齢者のイメージを変え、町の魅力を発信したい」と、担当者は意気込む。

バンドのメンバーたちは、これからも音楽を続けるつもりだ。「人生100年時代、まだまだやりたいことはたくさんある。音楽はその一つ」と、メンバーの一人は語る。平均年齢73.5歳のロックバンドは、これからも阿蘇の山間に響き続けるだろう。

高森町を訪れた際は、ぜひバンドの演奏を聴いてみてほしい。年齢を超えた情熱とエネルギーに、きっと感動することだろう。

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