サトウキビから生まれた万能タレ 高校生が創る西原町の未来
沖縄の夏は、サトウキビ畑の緑が一層鮮やかになる季節だ。風にそよぐ葉の音が、どこか懐かしくも新しい何かを感じさせる。西原町の高校生たちが手掛けた新特産品「サトウキビから取っタレ」は、まさにそんな風景の中から生まれた。
「西原町の特産品といえば、まず黒糖が思い浮かびます」と話すのは、NS²BP(西原町学生ソーシャルビジネスプロジェクト)のメンバー、宮城愛美さん(仮名)。彼女たちが商品開発を始めたきっかけは、町の歴史に深く根ざすサトウキビへの愛着だった。
「町内にはかつて製糖工場が二カ所もあり、沖縄県内でも有数のサトウキビ産地でした。その伝統を活かして何かできないかと考えたんです」
商品開発の過程は決して平坦ではなかった。何度も試作を繰り返し、甘すぎず、かといって物足りなさもない絶妙なバランスを追求した。「最初は黒糖をそのまま使おうとしたんですが、甘すぎて料理の幅が狭くなってしまう。どうしたら西原の特産品として成り立つのか、試行錯誤の連続でした」と、チームリーダーの比嘉大輔さんは振り返る。
彼らの努力は実を結び、東海岸やちむん市での販売では「思ったよりいろんな人が立ち寄ってくれて、売れるのは早かった」と比嘉さん。しかし、改善点も見えた。「もう少し沖縄らしい方言とかで呼び込みができたら良かったなと思います」
このプロジェクトの背景には、西原町の産業構造の変化がある。かつて製糖業で栄えた町は、現在では文教都市としての顔を持つ。大学や専門学校が立地し、県外から多くの学生が集まる一方で、卒業後の定住率は低いという課題を抱えている。
「若者が地域に残るためには、自分たちで町を盛り上げる仕組みを作る必要がある」と語るのは、町商工会の担当者。NS²BPの活動はまさにその理念に沿ったものだ。
「高校生と大学生で活動しています」と名乗ると、多くの人が驚き、感心してくれたという。若者の地元愛が、商品の魅力をさらに引き立てている。
商品名の「サトウキビから取っタレ」には、彼らの遊び心と自信が込められている。「タレ」という言葉は沖縄料理には欠かせない調味料を指すが、それをサトウキビから「取る」というダブルミーニング。「万能!」と銘打たれた通り、肉料理から野菜炒めまで、さまざまな料理に使える万能調味料として開発された。
2年に1度開催される「西原町の産業まつり」では、自治会が対抗で黒糖作りを競う「シージョウスーブ」が開催され、たくさんの町民が参加する。その伝統を受け継ぎながら、新たな形でサトウキビの魅力を発信する高校生たちの姿は、町の未来に希望を与えている。
「西原町から愛を届けにやってきました!!」。彼らの声は、サトウキビ畑の風に乗って、町中に響き渡る。それは単なる商品開発ではなく、町の歴史と未来をつなぐ物語の始まりなのかもしれない。
大型複合施設の進出など、西原町は今後大きく変化していく。そんな中で、地元の高校生たちが生み出した「サトウキビから取っタレ」は、町の新たな顔として輝き続けるだろう。彼らの情熱と創造力が、西原町の魅力をさらに深めていくに違いない。
この夏、西原町を訪れたら、ぜひ「サトウキビから取っタレ」を手に取ってほしい。それは単なる調味料ではなく、若者たちの夢と町の歴史が織りなす、新しい西原の物語なのだから。