国保医療費の鍵は「道と電話」
山あいの静寂を切り裂く救急車のサイレン。青木村の国保医療費が長野県内でも高止まりする理由は、意外なところに隠れていた。
3月の終わり、田沢地区に住む89歳の女性は、2週間に一度の受診を終え、青木診療所の玄関を出た。国道143号線脇で西の山々を見つめながら、彼女はつぶやいた。「曲がりくねった狭い道を運転し、松本まで母の看病に通ったものです」
この一言が、青木村の医療費問題の核心を突いている。
道路と電話が医療費を左右する
厚生労働省のデータによると、青木村の1人当たり医療費は長野県平均を大きく上回る。その要因として、専門家は「地理的要因」を挙げる。
村唯一の医療機関「青木診療所」は、高齢者にとってアクセスしづらい場所にある。狭くて曲がりくねった道路は、救急車の到着を遅らせ、軽症のうちに治療を受けられないケースを増やす。結果として、症状が悪化してから受診する高齢者が多く、医療費が膨らむ悪循環に陥っている。
「電話」の問題も深刻だ。村内の固定電話の普及率は全国平均を下回り、急病時の迅速な対応が難しい。スマートフォンの利用も高齢者にはハードルが高い。
行政の取り組みと住民の声
青木村役場は、この問題に積極的に取り組んでいる。村のホームページ(http://www.vill.aoki.nagano.jp/)によると、高齢者向けの訪問診療や、移動診療車の導入を進めている。
しかし、住民の声は厳しい。「道が狭くて救急車が来るのに時間がかかる」「電話がつながらないことが多くて不安」といった声が相次ぐ。
データが示す現実
政府統計の総合窓口(e-Stat)のデータ(http://www.vill.aoki.nagano.jp/kokuho.html)によると、青木村の国保加入者の医療費は、年々増加傾向にある。特に、75歳以上の後期高齢者の医療費が突出して高い。
これは、全国的な傾向でもある。令和4年度の国民医療費は過去最高の48兆円を超え、高齢化が進む日本の医療費問題の深刻さを示している(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin//hw/k-iryohi/22/index.html)。
地域差の是正に向けて
厚生労働省は、地域差の是正に向けた取り組みを進めている。医療費の地域差指数を公表し、各自治体の医療費水準を可視化することで、問題意識の醸成を図っている(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/database/iryomap/index.html)。
しかし、青木村のように地理的要因が大きい地域では、一朝一夕に解決できる問題ではない。道路の整備や通信インフラの充実など、長期的な視点での取り組みが求められる。
未来への展望
青木村の国保医療費問題は、日本の高齢化社会が抱える課題の縮図とも言える。しかし、住民の健康と生活を守るためには、行政と住民が一体となって取り組む必要がある。
今後、青木村がどのような対策を講じ、医療費の抑制に成功するのか。その動向に注目が集まる。
※この記事は、信濃毎日新聞デジタルの報道(https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2025041000535)を基に、追加取材を加えて執筆しました。