ダーツがつなぐ島の未来 壱岐市エンゲージメントパートナー協定の深層
あの日、壱岐市役所の会議室に響いたダーツの音は、どこか懐かしくも新しい響きだった。長崎県の離島・壱岐市と、デジタルダーツで知られるダーツライブ社が手を組んだ「エンゲージメントパートナー協定」。一見すると、ダーツと地方創生は遠い世界のように思える。しかし、その奥には人口減少に悩む壱岐市が模索する、持続可能な未来への道筋があった。
島と企業、意外な出会い
「ダーツでシニア世代の健康づくり」。そんなコンセプトがきっかけで始まったこの取り組みは、2023年9月に正式な協定として結実した。ダーツライブ社が提供するデジタルダーツマシンは、オンライン対戦機能を備え、離れた場所にいる人々をつなぐことができる。これを活用し、壱岐市の高齢者施設を中心にダーツ大会が開催されるようになった。
実は、その前段階として、ダーツライブ社は壱岐市の高齢者施設にダーツマシンを提供し、オンライン対戦機能を使った交流イベントを支援していた。シニア世代がダーツを通じて身体能力の改善や認知症予防、コミュニケーション向上を図るという試みだ。ダーツライブ社のスポーツダーツプロジェクト担当者は「ダーツが単なる娯楽ではなく、健康づくりや地域活性化のツールになり得ることを実感した」と語る。
離島の課題と新たな可能性
壱岐市は長崎県の北西約50キロメートルに位置する離島で、人口約2万2000人。過疎化と高齢化が進む中、持続可能な地域づくりが急務となっている。2018年に「SDGs未来都市」に選定されたこともあり、地域活性化に向けた取り組みが活発化している。
その一環として始まったのが「エンゲージメントパートナー制度」だ。この制度は、企業や団体が壱岐市の魅力を体感し、地域課題の解決に向けて協力する仕組み。ダーツライブ社もこの制度に賛同し、協定を締結した。
協定の内容は多岐にわたる。ダーツを通じた健康づくりや地域交流の促進はもちろん、壱岐市のワーケーション施設の体験利用や、島の魅力発信への協力なども含まれる。ダーツライブ社は「壱岐の自然や文化に触れ、島での仕事や暮らしを体験することで、単なる観光では得られない深い関係を築きたい」と意気込む。
ダーツ大会に見る地域の力
実際に開催されたダーツ大会では、壱岐市の高齢者約20名が参加し、広島県熊野町の参加者とオンラインでつながった。ZOOMを使って会場を繋ぎ、自己紹介をしながらコミュニケーションを楽しんだ後、ダーツマシンの通信対戦機能を使ったチーム対抗戦が行われた。参加者からは「とても楽しかった」「ダーツを通じて離れた方と交流ができた」「マイダーツが欲しくなった」といった声が寄せられた。
この大会は、広島大学と県立広島大学、株式会社ONE ENTERPRISEの共同研究「ダーツによる健康効果の検証」の一環として行われた。シニア世代がダーツをプレイすることで得られる身体能力の改善、認知症の予防、コミュニケーション向上、集中力の向上のエビデンスづくりを目指すものだ。ダーツライブ社は、ダーツマシンの提供などを通じて研究を支援している。
離島の魅力、もう一つの顔
ダーツの話ばかりでは、壱岐市の魅力は伝わらない。壱岐は古代から大陸との交流の拠点として栄え、神社仏閣や史跡が点在する歴史の島でもある。また、豊かな自然に恵まれ、美しい海岸線や緑豊かな山々が広がる。特産品も豊富で、壱岐牛や壱岐牛、壱岐焼酎などが知られている。
最近では、壱岐市が「エンゲージメントパートナー制度」の一環として、パートナー登録企業等にワーケーション施設を体験利用できるようにしている。これにより、企業の社員やクリエイターなどが壱岐で仕事をしながら島の魅力を体感し、地域との交流を深めることができる。
未来への一投
ダーツライブ社と壱岐市の協定は、単なる企業の社会貢献活動にとどまらない。デジタル技術と地域資源を組み合わせることで、新しい価値を生み出そうとする挑戦だ。シニア世代の健康づくり、地域交流の促進、若者や観光客の呼び込みなど、多方面に効果が期待される。
離島の課題は一朝一夕には解決しない。しかし、ダーツの矢が的に向かって飛んでいくように、確実に一歩一歩、未来への道を切り開こうとしている。次に壱岐を訪れるとき、あの懐かしくも新しいダーツの音が、島のあちこちから聞こえてくるかもしれない。
参考URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000043246.html